第 4 章 胼胝(ベンチ)、沈黙のタコ!

コラム

2020.02.07

医学的には胼胝(ベンチ)、俗にたこ。皮膚への刺激によって角質が体側ではなく外側に何 枚も重なり厚くなったもの。 耳にタコも何度も繰り返し同じ話を聞いて、ということらしいです。
この胼胝は足のみならずいろいろなところにできますが、今回は足にできるタコのお話し です。

先日実際に出会ったタコのお話です。大きさは直径 8 ㎜くらい。第1趾MTP (Metatarsophalangeal joint)関節の外側方向にありました。(写真1) ひとめ見たときの違和感として何を感じますか? 私が感じた違和感の一つは、中心が茶色くてへこんでいるところと周囲が少し浮いている ところです。皮膚は厚く重なる(肥厚)と濃い黄色くらいの色にはなりますが茶色にはなり ません。中心だけがへこむこともありません。胼胝下潰瘍があり浸出液により中心に穴が開 いていると考えられます。そうなるとこの中心の茶色。血液とは違う感じがします。
もう一つの違和感は、肥厚した角質が浮いた部分(12 時方向)。浮いた部分を少し持ち上げ ると皮膚が浸軟していました。このことから、何かしらの水分(浸出液)が胼胝の下から出 ていることがわかります。肥厚した皮膚を削ると潰瘍がありました。(写真2)しかも排膿 しています。茶色は膿の固まった色でした。 足のケアって探偵みたいで面白いんです。ひっそりと足にくっついているタコ、要注意です。 医師に診察してもらいました。深さは 1.5 ㎜くらい。先ずは感染を抑える治療が始まりまし た。感染が落ち着いてから潰瘍の治療となることと思われます。
この症例は既往に糖尿病があります。医師がゾンデで深さを見たときには゛痛い!゛とお っしゃっていました。しかし、そこに至るまでの処置中にも、日常生活でも一度も痛みを感 じたことはなかったそうです。 糖尿病の合併症である神経障害により筋肉が萎縮して足の変形が起こり、今までは当たら なかったところが圧迫されるようになります。圧迫による痛み、しびれ、冷感も感じにくく、 糖尿病性網膜症により皮膚の色調変化にも気が付きにくい状況になります。
さらに、動脈硬化による血流障害、感染症を複合的に発症する糖尿病足病潰瘍で下肢の切断に及ぶ方が後を絶ちません。そもそも、自分が糖尿病に罹患していることに気づいていない 方もいらっしゃいますし、診断されていてもコントロールが出来ていない方も多くいらっ しゃいます。
私は、初めてお会いする患者様には、はじめましての挨拶と同時に必ず足を見せてもらい触らせてもらいます。皆さん協力的です。爪の伸び具合、形、普段の手入れを誰がするのか。 ハイリスクとなる因子があるか。これらからケアに入る頻度をだいたい決めます。高齢にな り自分の爪が切れない方がたくさんいらっしゃいます。その方たちがおっしゃることは、 「人に爪を切ってもらうようになるなんて思いもしなかった。」と。
フットケアとして今最も介入頻度の高い方では 2 週に 1 回、リンパ浮腫治療では週に 2 回 訪問している方がいらっしゃいます。潰瘍がある方は毎日創の処置に入っています。足の爪の伸びる速度は手の爪の 2 分の 1 から 3 分の 1。健康な方で 1 日に約 0.1mm、しかし、高 齢化によって遅くなります。状態が落ち着けば月に 1 度から 2 度の継続ケアとなります。 医療に携わる方にはぜひ、初めましての時に足を見てきていただきたいです。 「初めまして、足見せてもらえますか?」と。


MTP 関節…中足趾節関節 潰瘍…深部にまで及ぶ組織の欠損
浸軟…ふやけ
ゾンデ…細い棒状の医療器具
糖尿病性神経障害…高血糖が続くことで神経の働きが害されること
浸出液…白血球、タンパク分解酵素などを含む組織間液
合併症…ある病気が原因となって起こる別の病気