Possibility

特別座談会:
〜Better Community へのチャレンジ〜

テーマ2 看護を通じた地域連携、地域づくり

ゴールに向けて自在に
未来社会を描く。
それって大変だけど、
すごく楽しい。

パネラー

曽雌 哲也

みんなのかかりつけ 訪問看護ステーション
植田事業所 所長

道路設計企業での会社員経験を持つ異色の看護師。当時、同居していた祖母が認知症になり自宅で介護をしていたことが契機となり、医療福祉業界に興味を持つようになる。会社を辞め、愛知県立総合看護専門学校で学び、名古屋市内の赤十字病院で看護師勤務をスタート。10年後、男性看護師会の集まりで藤野と出会い意気投合、デザインケアへの転職を決意した。

吉村 元輝

みんなのかかりつけ 訪問看護ステーション
副ブロック長

大学病院勤務時代に認定看護師資格を取得する。理想の訪問看護の在り方を模索する中でデザインケアと出会い、2018年4月に転職。すぐに緑事業所の立ち上げに関わり、2019年4月、同所所長に就任した。職場では頼れるリーダーとして、平日の夜には「非がん緩和ケア」を学ぶ大学院生として、休日には3人の子どもたちの良き父親として、日々奮闘する。2019年12月、名古屋地区で複数店舗を統括する副ブロック長へ。

ファシリテーター

藤野 泰平
株式会社デザインケア 代表取締役社⻑/看護師

※所属・肩書等は取材時のものです

課題

2014年の第六次医療法改正は、医療の役割分担の流れをさらに推進するものとなった。すなわち医療と地域の連携。この「地域医療構想」は、急性期医療から回復期、在宅医療から介護まで、一連のケアを切れ目なく提供しうる体制をつくり、医療サービスの維持を図っていく、という目的のもと始動した。現実はどうか。2019年に報告された厚生労働省の「地域医療構想について」を見てもわかる通り、順調に推移しているとは言い難い。どうするか。「待つ」ではなく、「自分たちで動く」しかないのではないか。なぜなら私たちは、町や地域という現場で、直接利用者様のご自宅に伺い、365日24時間、看護サービスを提供している主体者なのだから。ここではデザインケアが取り組む「地域連携、地域づくり」の現在地を紹介する。

医療・看護を連携させることで、
安心して生きていける地域づくりに挑戦したい!

藤野 デザインケアの可能性を語り合う特別座談会、第2回目を始めたいと思います。今回のテーマは『看護を通じた地域連携、地域づくり』です。それではパネラーをご紹介します。植田事業所の所長、曽雌哲也さんと緑事業所の所⻑兼副ブロック⻑で緩和ケア認定看護師の吉村元輝さんです。今日はよろしくお願いします。まず、ご担当されている地域の特徴から教えてください。
吉村 吉村です。名古屋市緑区と南区を担当しています。特徴としては、高齢者人口が市内で最も多いというのがあります。後で詳しくお話ししますが、地域特性上、認知症対策とがんのサポートが私たちの使命だと考えています。また大きな病院がないというのも特徴的です。二次救急医療の病院が最大で、三次になるとエリア外へ、ということになります。訪問看護の同業は多いのですが、横のつながりはまだまだ薄いですね。
藤野 ありがとうございます。では、曽雌さんのところはどうですか?
曽雌 曽雌です。「そし」と読みます、よろしくお願いします。私の事業所は天白区、昭和区、瑞穂区の3つを見させていただいています。医療環境的には、吉村さんのところとは逆に三次救急対応の大病院が点在しています。また在宅での看護に切り替える方も多く、訪問看護へのニーズはとても高まっていると感じますね。
藤野 わかりました。それぞれに特徴的ですね。曽雌さんは、現在の担当地域でどのような取り組みを行っていこうとされていますか?
曽雌 えー、「そし」と読みます。もういいですね(笑)。私はずっと、医療・看護を軸とした地域連携活動ができないかと模索していまして、ついにその第一歩を踏み出すことができました。地区内に点在する大病院と訪問看護ステーション、もちろんデザインケア以外の事業者も含めてですが、それらをつなぐことで医療・看護を通じた地域づくりを行っていくという構想です。まずは顔の見える関係性をつくるべく、私が発起人となって、病院の地域連携室の看護師さんやケアマネージャーさん、ドクター、他の訪問看護事業所の所長さんらを集めて意見交換会を開催しました。ここで大事にしたのは、「地域に暮らす人たちを医療で支える」という目的に向かって、同じ意識やスタンスを持つこと。それらを、できるだけ共通の言語で共有すること。その上でお互いに違いや得意分野を認識できると、やれることがどんどん広がっていくんじゃないかと思っています。
藤野 期待が膨らむ第一歩ですね。ぜひ今後の展望もお聞かせください。
曽雌 この会はまだ始まったばかりで、現状、医療関係者のみで実施されています。早くここに地域住民の方や利用者様のご家族、企業や行政の方々ほか、多様なステークホルダーの皆様に参加して欲しいと考えています。そのためには、柱となるテーマの設定や実効性の高い勉強会の起案、参加者も出展者もメリットを享受できるようなカンファレンスの企画等、やりたいこと、やらなければならないことをしっかり整理してカタチにしていかなければなりません。「地域みんなが参加して、みんなで地域を支える」。この目的だけは絶対にブラさない。そう決めて、前に進んでいきます。

認知症ケアチームを立ち上げ、
みんなで支え合える町づくりに貢献したい!

藤野 曽雌さん、ありがとうございます。それでは吉村さん、今チャレンジされていることについて教えてください。
吉村 わかりました。先ほども軽く触れましたが、事業所全体で認知症予防ケアプロジェクトに取り組んでいます。自分たちが介在することで、何か医療を通じた地域貢献はできないか?そんな思いで担当しているエリアを眺めた時、自然とこのテーマにたどり着きました。最初にみんなで実行したのは、認知症の実態を正しく知ること。全員が認知症サポーター研修を履修し、また地域の認知症カフェにも定期的に顔を出すようにしました。次は、協働パートナーの探索。自分たちだけが頑張っても、たぶんうまくいかない。そこで緑区のいきいき支援センターに、『この地で豊かに最後まで暮らせる、そんな地域づくりのお手伝いがしたい!』という熱い思いと、認知症ケアに関するプランをお伝えさせてもらったところ、とても前向きなリアクションをいただきまして。今では地域のイベントにも参加させていただき、訪問看護や緩和ケアについてのPRも積極的に行っています。
藤野 いいですね!吉村さんが持ち込んだ、認知症ケアに関するプランとはどういったものなんですか?
吉村 はい。緑区、南区は高齢者人口も多いのですが、最近は子育て世代も増えています。そこで、学童の子どもたちに認知症サポーターになってもらい、例えば小学校高学年の子が、放課後に徘徊ご老人をサポートする。そんな町づくりを実現したい!とご提案しました。実際、子ども用のサポーター研修もありますし、道徳教育的にも、とてもいいんじゃないかと。
藤野 ぜひぜひ進めていってください。今後に向けて課題はありますか?
吉村 そうですね、まずは医師をどうプロジェクトに巻き込むのか?やはり実績と影響力のある方の賛同を得たいですからね。アプローチしたい先生はもう決めています。そこから地域で診療にあたってくださるサポート医を増やしていきたいと考えています。次が一番大きい問題なんですが、我々訪問看護スタッフが認知症予防に関して介入できる、という認識がそもそもない。利用者様や地域の皆さんだけではなく、ケアマネージャーさんでも大抵そうですね。訪問看護で行うケアが、実は認知症の予防にも活用できることを、きちんと啓蒙していくことが大事だと思っています。もちろん重度認知症の方に対応していくには、もっともっとケアの質を高めていかなければなりませんが。
藤野 もう一つだけお聞きします。事業所での推進体制を教えてください。
吉村 「認知症ケアチーム」を組成しました。具体的なプランや運用はリーダーとサブリーダーに任せて、やりたいことを主体的に実行してもらっています。きっかけは私がつくったのですが、今やすっかり「我がプロジェクト」という思いで、メンバー全員、前向きに取り組んでくれています。

『農業×看護モデル』の実現を自ら!
『子ども×高齢者連携社会』の創生を未来に!

藤野 素晴らしいですね!吉村さん、ありがとうございます。少し先の話で構いません、お二人が実現したい「Better Community」について、ぜひ。
曽雌 藤野さんも常々おっしゃっていますが、私たちの事業はまさに社会インフラであります。どうやって訪問看護がない地域にサービスを届けていくのか?特に僻地への展開は、収益と人材の面でとても難しい。そこで私が夢想しているのが、『農業×看護モデル』です。つまり農業をやりながら訪問看護事業をするのです。午前中は畑で野菜づくり。一緒に働くのは精神疾患や認知症の方、脳梗塞で麻痺等の後遺症を持たれている利用者様。リハビリや自立支援をさせていただきながら、共に農業収益を上げていく。そして午後からは訪問看護。軽トラに野菜を積んで出かけていく…。こんなふうに田舎で暮らしながら一緒になって治し、自分たちで稼いでいける未来をいつかカタチにできたらと思っています。
藤野 訪問看護という社会インフラを預かる私たちが、どこまでセーフティネットの機能を維持できるのか。常に考え続け、行動を起こしていかなければならない問題ですね。吉村さんはどんな未来構想をお持ちですか?
吉村 私は未来を背負っていく子どもたちと、今をつくってくれた高齢者たちが地域でつながる社会を創造したいと思っています。今取り組もうとしている「学童の生徒による認知症ケアサポート」もこの一環です。人が生き、そして死んでいく。子どもたちが、人生観や死生観を身近な暮らしの中で会得できる地域社会。そこに暮らす人々がお互い支え合いながら、人生を豊かにしていける世の中。私たちが関わることで、少しでもこんな未来をつくり出すことができれば、本当に幸せなことですね。
藤野 曽雌さんの描く未来も、吉村さんの望む社会も、ぜひとも実現させたいですね。さて改めて考えますと、なんで一看護師、一セラピストの自分が病院と地域社会を連携させたり、子どもと高齢者がつながる町づくりを提案したりするのか?この問いがとても大事だと思っています。しっかり看護だけをしていればいいじゃないか。そんな意見もあるかもしれません。でも、そこに縛られたくはない。なぜならデザインケアの目的は、「全ての人々が豊かに暮らせる社会を実現すること」だから。そして私たちは、日々、地域社会に出て行って、走り回り、利用者様をはじめ多くの人に会い、思いや考えを聞くことで、生きる喜びや力の源を直接知れる立場にあります。私たちは地域で働いているのです。だからこそ、その地域を良くしたい。そのためにできることを、一緒に考えて実行していきましょう。