Possibility

特別座談会:
〜Better Community へのチャレンジ〜

テーマ5 看護インフラの拡大

自分の地元で。
好きな場所で。
社会インフラの
拠点を築いていこう。

パネラー

塚原 稔世

みんなのかかりつけ 訪問看護ステーション
藤が丘事業所 認定看護管理者

前々職は会社員。海外出張先で体調を崩したことで健康の重要性を強く認識、高校時代から興味を持っていた医療の道に進むことを決意する。看護師の資格を取得し、岐阜県多治見市内の病院に就職。患者さんの退院支援にもっと寄り添っていきたいと訪問看護への転身を考えている時にデザインケアと出会い、その思想、組織、風土等に一目惚れし、入社を決める。

伊佐治 哲也

みんなのかかりつけ 訪問看護ステーション名古屋事業所
がん看護専門看護師

訪問看護師として、がん看護専門看護師として利用者様や社内のメンバーたちと日々、忙しく向き合っている伊佐治も、元々は病院に勤務する看護師であった。旧知の間柄である藤野と今後の看護の在り方や乗り越えるべき課題等を議論する中で、地域における訪問看護インフラの重要性と必要性を再認識。師長の職を辞して、デザインケアへ飛び込むこととなる。

ファシリテーター

藤野 泰平
株式会社デザインケア 代表取締役社⻑/看護師

※所属・肩書等は取材時のものです

課題

社会保障とは、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民に健やか安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うものである」と定義されている。つまり、誰でも、どこに居住していても、社会的セーフティネットとしての社会保障(医療・看護サービス)を受けることができるのだ。ただ現実に目をやると、都市部と過疎地における医療機能の質的量的な格差は縮まっておらず、ユニバーサルサービスの役割が果たせていないと言わざるを得ない。それは看護サービスについても同様で、地方ではいまだ、訪問看護を提供できていない地域が多数存在している。ここでは、こうした社会課題に立ち向かおうと動き始めたデザインケアの挑戦の現場にスポットを当てたい。

デザインケアの組織風土と考え方…
その全部を、丸ごと岐阜の地へ!

藤野 デザインケアの可能性を語り合う特別座談会、第5回を始めます。今回は『看護インフラの拡大』というとても重要なテーマについてディスカッションしていきたいと思います。それではパネラーの紹介です。まず、藤が丘事業所の塚原稔世さんです。よろしくお願いします。
塚原 よろしくお願いします。
藤野 そして名古屋事業所の伊佐治哲也さんです。よろしくお願いします。
伊佐治 よろしくお願いします。
藤野 私たちデザインケアでは、社会インフラとしての訪問看護ステーションの地方展開をこれから推進していくわけですが、お二人には現在、岐阜での初出店の準備をお願いしています。早速ですが伊佐治さんにお聞きします。岐阜の地域特性や医療福祉的課題について教えてください。
伊佐治 はい。地図をご覧いただければわかる通り、岐阜は内陸県で自然に恵まれた山間部の多い場所です。ただ、地方に行くと過疎化と高齢化が進み、訪問看護ステーションがない地域も多々あります。私が出店を考えているところについて言えば、急性期に対応する総合病院はあっても、回復期やそれ以降に寄り添っていける訪問看護ステーションの数が圧倒的に少ない。現状4つの事業所しかなく、職員の平均年齢も高くなっています。つまり看護する側もされる側も、慣れ親しんだ我が町で住みづらい環境になってしまっているという課題があるのです。病院の看護師時代も、退院したあの患者さんは、今どうしているだろうか、何とかできないものだろうかと、塚原さんともよく話し合っていました。
塚原 そうなんです。違う病院でしたが、毎晩のように(笑)。診療群分類包括評価(DPC)対象病院では在院日数の短縮化が進み、生活する力が落ちたご高齢の患者さんは、退院後、今まで通りの暮らしを自宅で送ることが難しくなっている。訪問看護や介護老人保険施設といった受け入れの場も、ヘルパーさんや看護師といった人的リソースも足りていない。彼ら彼女らを支える資源が、都会と比べると本当に少ないんです。「家に帰って自分らしく暮らしたい」。そんな切実な願いが叶う社会的インフラを、何としてでも岐阜の地につくりたい。そうずっと思ってきました。デザインケアなら実現してくれる、『みんなのかかりつけ』に相談すれば大丈夫、そんな存在に早くなりたいね、と昨日も伊佐治さんと話し合っていたところです。
藤野 岐阜の現状とお二人の思いはよくわかりました。では、足りていない資源を補完するものとして、どんな仕組みや施策が必要でしょうか?
塚原 地域コミュニティの活用です。そこに暮らす住民の力をお借りする。町内会や学区等、小さな単位での連携や結束が強いのは田舎ならではの利点です。公民館でも廃校になった小学校でもいい、集える場所を確保して、そこを起点により大きなコミュニティに接続していければと考えています。
伊佐治 地域全体が多機能型事業所になっていく。そんな世界観を志向しています。いい意味でのおせっかい気質のある田舎にはマッチしていると思っています。60代、70代の元気なお年寄りが、さらに上の年代のお世話をする。そこに子どもたちが加わり、生きること、老いること、死ぬことを学んでいく。ステーションや医療関連施設ができれば、そこに仕事が生まれ、20代、30代、40代の世代も安心して働いていける。そんな持続可能な地域づくりを、デザインケアの一員として推進していきたいですね。
藤野 社会インフラとしての訪問看護地域展開。そんな挑戦を始めていらっしゃるお二人ですが、出店する地域に何を提供していきたいですか?
塚原 このフラットな組織、年齢関係なくお互いを認め支え合える風土、利用者様ファーストの考え方…。つまり、今のデザインケアを丸ごと岐阜に持っていきたいと思っています。それをベースに、自分の経験の全てを注いでいく。そんな覚悟です。
伊佐治 私も同じです。名古屋だけじゃもったいない(笑)。この職場風土、考え方を岐阜に、そして全国に広めていきたいですね、塚原さん!

生まれ故郷、岐阜の地で、
「地域健康モデル事業」を立ち上げる!

藤野 デザインケアはどこでも受け入れられる!いやぁ、力強い宣言、ありがとうございます。さて、私自身「医療はその地域地域に根ざした文化だ」と思っているのですが、都会と地域との違い、名古屋でのケアと岐阜でやる時との違い等、何か意識されていることはありますか?
塚原 繰り返しになりますが、私たちのケアや組織風土はどこでも通用すると確信しています。田舎の方が一度信頼を築ければ、オープンに接してくれるところがありますし、より受け入れられやすいかもしれません。
伊佐治 同感です。私が出店する地域は、自分が生まれ、今もこれからも暮らしていく場所−故郷、と決めていました。家族、友人、知人、恩師たちのいるこの場所で、私たちの「Better Care」をどんどん推進していきます。そして地縁、人脈、口コミ等を最大限活用して「Better Community」づくりに挑んでいきます。
藤野 さまざまな業種や職種、ステークホルダーの方々との連携なくしては、地域での訪問看護サービスは成り立ちません。逆にそこがしっかりとつながって行けば、一気に「Better Community」の可能性が広がりますね。
伊佐治 そうなんです。人脈で言えば、病院時代に一緒に働いていた医師や看護師、セラピスト。そしてケアマネージャーさんや他の訪問看護事業所の所長さんとかもいますし…
塚原 今私は、ある市議会議員さんと「どんな地域をつくるべきか?」「どうやって地域に暮らす人たちの健康を守っていくのか?」といったテーマで議論を始めています。
藤野 それは素晴らしいですね。具体的に何か動きはありますか?
塚原 まだまだ模索中なことが多いですが、民生委員さんと市役所の職員さんらとともに、退院後の暮らしを支援する「受け入れカフェ」的なことをやろうと話が進んでいます。まずは小さなユニットでトライアルをして、その成功モデルをより大きなユニットで試していく…。そんな行政と医療、福祉とをつなぐ「地域健康モデル事業」を立ち上げていきたいと考えています。もちろん、そこに民間の人たちにも参加してもらって。
伊佐治 私と塚原さんの間では、それを『岐阜モデル』と呼んでいます!

『岐阜モデル』を成功させて、
それを日本全国に展開していきたい!

藤野 デザインケアはこれからさらに出店を加速して、それらを束ねる地域会社を全国に立ち上げていく構想を持っています。同時にその地域会社の社長もどんどん輩出していきたい。そんな中お二人は、岐阜という地をどうしていきたいとお考えですか?
伊佐治 これから岐阜にはリニアが開通し駅もできる予定です。そうなると、東京からのアクセスも格段に良くなり、人の行き来もぐっと増えていくでしょう。岐阜には都市も、飛騨の山奥のような限界集落もあります。このような多様な地域で、訪問看護を軸とした地域健康モデルが成功するということは、かなり大きな影響力があるんじゃないかと思っています。地理的な距離や業種業態の垣根を飛び越えて、さまざまなステークホルダーと手を組んでいきたい。実際、刃物会社の社長が「ウチの包丁、提供するよ」とおっしゃってくれたり、美容院のオーナーが「おばあちゃんの髪、切りにいくね」と約束してくれたりしています。こんな動きが岐阜から日本全国へと広がっていく未来を考えると、本当にワクワクしますね。
塚原 「無医村」がネガティブじゃない将来が来ると思っています。5Gで遠隔医療はさらに進化していきます。診療看護師(N P)の活躍のフィールドも今よりもっと拡大していくでしょう。どこにいても同じクオリティの医療や看護が受けられる世界。それはつまり、生まれた土地や好きな場所で、最後まで自分らしく暮らし続けられる世の中になるということ。この実現に向けて、とにかくスピード感を持って『岐阜モデル』をカタチにしたい。10年後じゃ遅い。デザインケアが自治会長的な役割を担いつつ、賛同者をどんどん増やしていきたいと思っています。
藤野 私は愛媛県の島出身で、病気になればフェリーに乗って松山の病院まで行かなければならない、そんな土地で育ちました。だからこそ、どこにいても医療看護という社会保障が受けられる未来をつくりたいんです。自分の地元でもいい、自分の好きな地域でも構いません。そこに暮らす人たちを何とかしたい。そんな思いを持つ方たちをこれからも応援し続けます。塚原さん、伊佐治さん、今日はどうもありがとうございました。