病院の副師長から訪問看護に。「これはじいさんからもらった使命やな」(社員インタビュー#22)
訪問看護ステーション箕面
2024.02.01
こんにちは、みんなのかかりつけ訪問看護ステーション・広報の野田(看護師)です。今回はみんなのかかりつけの大阪府内1号店である箕面店(大阪府箕面市)の管理者インタビュー記事をお届けします。
登場するのは、2023年4月にかかりつけに入職し、5月の箕面店オープン当初から所長をつとめる増田貴生(ますだ・たかお)さんです。病院の副師長という立場にいた増田さんに、かかりつけへの転職理由やかかりつけの魅力について話を聞きました。
これまでの経歴を教えてください
子どもの頃、両親が共働きだったため、祖父母によく面倒をみてもらっていました。もともと人と接することが好きで、高齢の方に何かお手伝いすることが好きでした。看護師の母親が働く姿を見ていたこともあり、「私も人の役に立つ仕事をしたい」と思い看護師を目指しました。
看護大学を卒業後、大阪府の国立循環器病研究センターに入職しました。脳外科のICUを約3年、心臓外科のICUを約7年経験し、看護師9年目で副師長となりました。その後、HCUで2年、看護部長室付の教育担当を3年務め、一般病棟で3年働きました。計17年勤務し、2023年4月にかかりつけに転職しました。
転職を考えるようになったきっかけは?
一般病棟で副師長をしている時に、子どもが手術をしたことがきっかけです。私は子どもが3人いて、ある日、遊んでいるときに一番下の子が転んで急性硬膜下血腫を起こしてしまいました。緊急開頭手術を行い、今では後遺症もなく元気にしていますが、家族と一緒にいられる時間を考えて将来に不安を感じました。
前職では、キャリアアップのために関連病院に転勤する制度がありました。府外で単身赴任する可能性もあり、家族と離れてしまうと、親としての役割を全うできないと思ったのです。私はいずれは看護師長や看護部長になりたいと思っていましたし、上司も私に期待してくれていたように感じていました。しかし、子どもの手術をきっかけに、これからの人生と看護師のキャリア、そして「自分が本当にしたいことはなんだろう?」と考えるようになりました。
かかりつけを知ったきっかけは?
代表・藤野さんとの出会いがきっかけです。藤野さんとは『看護師100人カイギ』というイベントで知り合いました。藤野さんと話すうちに、藤野さんと私の価値観が似ているように感じました。
私は救命することに重きを置く集中治療や急性期しか経験してきませんでしたが、「患者さまが退院後にその人らしく生活していくことを支えたい」と思いながら、日々看護をしてきました。私の考えが、デザインケアが大切にする生きる力や生きる希望とつながるように感じ、訪問看護という選択肢を考え始めました。
かかりつけに転職しようと思った理由は?
私は病院で管理に力を入れながら、人材育成にずっと取り組んできました。大学院にも進学し、看護師の定着について研究をしながら、病院の中でいい組織をつくりたいと思いながら働いてきました。うまくいかないことも叩かれることもありながらも、それが正しいことだと思って取り組んできました。
しかし、藤野さんに「増田さんはそれをいつまで続けますか? 10年それを続けて、どれくらい組織が変わりましたか?」と問いかけられ、「組織を変えられなかった」と思いました。病院という大きな組織は、私一人では簡単に変えることはできなかったのです。
一方で、かかりつけのようにさまざまなことに柔軟にチャレンジできる組織であれば、私がこれまで培ってきた能力を活かして人材育成し、看護を楽しむ人たちをもっと増やせるかもしれないと思いました。また、キャリアアップのためには関連病院への転勤が避けられないため、10年後の自分の姿を想像できなかったことも理由の1つです。
国立循環器病研究センターという病院が大好きだったので、他の病院に転職しても同じモチベーションを保ち続けることはできないと思っていましたし、他の病院で働くという選択肢はありませんでした。このような理由から、かかりつけへの転職を考えました。
転職の決め手はなんですか?
組織づくりだけでなく、社会貢献に取り組めるというのが決め手の1つです。国立循環器病研究センターという病院には、全国から多くの患者さんが治療を受けに来られます。しかし、病院に来ることができないために、治療を受けられずに命を落としてしまった人もいると思います。
病院という構造上、仕方ないことではありますが、その仕組みは『みんな』にとっていい社会ではないと思います。一方、かかりつけは「日本のどこにいても最高のケアを受けられる社会」を目指しています。社会貢献という点で、私はそのビジョンに強く共感しました。
もう1つ、大好きだった祖父が病院で亡くなった経験も、決め手になりました。祖父は内気な性格でしたが、本当に家が大好きで、家族みんな祖父を家に連れて帰ってあげたいと思っていました。しかし、私の実家は兵庫県の中でも特に田舎で、医療過疎地域です。医療職でありながら、当時の私たちには「訪問看護を使う」という選択肢はありませんでした。人様に家に入ってほしくないという、地域の価値観もあったように思います。
そのため「家で何かあれば介護者である母に強い負担がかかってしまう」という不安を払拭できず、最終的に病院で最期を迎えることを選びました。まだ2年ほど前のことですが、当時、訪問看護というリソースを使えていたら、もしかしたら家に帰ることができたのではないかと思っています。
周囲からは「なんで転職するの?」と何度も言われましたし、葛藤もありました。しかし、かかりつけへの転職を祖父の死と関連付けて「これはじいさんからもらった使命やな」と自分に課し、転職を決めました。
初めての訪問看護はどうでしたか?
私が臨床で所属したのは集中治療室と急性期病棟のみで、かつ、循環器しか経験してきませんでした。そのため、訪問看護でどこまでのことができるのか不安でした。初めてのことだらけで、戸惑うことも多くありました。
しかし、新しい治療に出会った時「どのように勉強すればその治療に適合した看護実践ができるか」という思考プロセスは、前職で十分に経験してきました。その思考プロセスは、訪問看護のケアにも応用できていると感じます。
給与面では、前職では月4回ほどの夜勤と役職手当が含まれていたため、かかりつけへの転職で若干減りました。しかし、必ずしも「給与が多い=幸せ」ではないと思います。家族が生活するための給与は必要ですが、それ以上にやりがいを感じながら仕事を楽しめることが大切だと私は考えています。かかりつけでは、前職以上のやりがいを感じていますし、夜勤がないので家族と一緒にいられる時間も増えました。
入職して1カ月で箕面店の立ち上げ所長となり、新規のご依頼がくるまでは焦りばかりが募っていましたが、地域の皆さまに少しずつ認めていただきながら、ご依頼も増えてきました。
ケアで心がけていることを教えてください
私自身、直接ケアをすることがとても好きなので、目の前のご利用者さまに一生懸命関わることを一番大事にしています。ただ、訪問看護ではご利用者さまと限られた時間しか関わることができません。ご利用者さまの生活を長いスパンで捉えると、多くの方との連携が大切です。
より良い連携のために、コミュニケーションを取るときに「今日も増田さんと話せてよかった」と気持ちよく思っていただける事業所、管理者でいられるように心がけています。
かかりつけの魅力は何ですか?
新しいことにチャレンジし続けられることです。訪問看護という型にはまるのではなく、イノベーションや改善をしていく風土があります。
かかりつけに入って一番衝撃的だったのは、挑戦者であり続ける人材を育成するため、管理者が徹底的にディスカッションしてPDCAサイクルを回していることです。ビジョンにもあるように、スタッフ一人ひとりが常に当事者意識を持って挑戦者であり続ける組織は、かかりつけだからこそだと思います。
私自身も、訪問スケジュールの組み立てや時間の使い方などの業務改善に、日々チャレンジしています。そのなかで、ご利用者さまやご家族の満足度を高めるために何ができるかを考え続けています。
また、かかりつけに入職して、人として成長できているように感じています。多職種で連携しながら、ご利用者さまの人生に深く関わるなかで、看護師として、人として成長させていただいています。訪問看護には多くの可能性があり、これからその可能性を模索していきたいと思っています。
心に残ったエピソードはありますか?
以前、抗がん剤の治療をされて、ご自宅に帰ってこられたご利用者さま(以下、Eさまとお呼びします)がいらっしゃいました。Eさまは余命が限られていましたが、治療の副作用がとてもつらいものであったこともあり、最期の瞬間を考えることを避けられているご様子でした。
しかしある時、Eさまが奥さまに「もう増田さんや石川さん(箕面店スタッフ)に家で看取ってもらいたい」と話されたそうで、そのお話を奥さまからお聞きしました。地域で私たちを必要としてくださる方がいること、また、そう思っていただけるほど深い関係性を構築できたことに、とても嬉しく思いました。
もちろん病院でも心を込めてケアをしてきましたが、病院は交代勤務であり、患者さまやご家族もよくご理解されており、関係性を深めることが難しい構造があると思います。一方、訪問看護は一対一で関わるため、深い関係性を構築しやすいと感じています。Eさまとの間に感じられた深い関係性は、私のこれまでの経験とは比にならないほどでした。
箕面店が目指すことを教えてください
祖父が亡くなった時に強く感じたことですが、ケアの地域格差をなくしたいと思います。大阪府内では、大きな病院がある地域とない地域では、受けられるケアの格差がハッキリあります。箕面店がある周辺には、大学病院や地域の中核病院も多く、医療やケアにとても恵まれている一方で、大阪府内でも南の方は下町のような場所が多く、病院が少ない地域もあります。ケアの地域格差をなくすため、大阪府内にかかりつけの店舗を増やしていきたいと考えています。
そのためには、まず箕面店で質の高いケアを提供することが大切です。地域の中で「やっぱりかかりつけっていいケアをしてるね」と喜んでいただける方が増えていけば、その先に新しい店舗をつくるという結果がついてくると思っています。そして大阪府内をカバーできるようにしていきます。
さらにその先には、「日本の隅々まで最高のケアを届ける」というデザインケアが掲げるビジョンの実現を目指します。
管理者として取り組んでいきたいことはありますか?
組織づくりと、次世代に繋がる人材育成に取り組んでいきます。藤野さんや私がいなければいいケアができないという体制ではなく、その人がいなくてもいいケアができる組織づくりが大切です。
そのためには、どんどん若い世代が活躍していくことも重要で、本人のやりたいことを大切にしながら、積極的にチャレンジする機会をつくっています。大人は、経験を通して学習し、成長していくと言われています。いかにいい経験ができるかが、スタッフの成長には欠かせません。チャレンジの結果、失敗しても成功しても丁寧にフィードバックをして、またチャレンジの機会をつくり、実践する、というサイクルを意識してつくっています。
私の考えていることや、どのように成長してほしいのかという期待も、なるべく言語化して伝えながら、組織づくりと人材育成に取り組んでいきます。
これからの看護師に求められることは何でしょうか?
これからの時代、看護師も自分をブランディングし、自分自身の価値を生み出すことが大切だと思います。看護師はまだまだ引く手あまたな職業ではありますが、本当にやりたいことを選択していけるかどうかは、ブランディングによると思います。周りに認めてもらえるような価値を持っていなければ、働く場所を選択できず、本当にやりたいことができなくなるという状況にもなりかねません。
私の価値は、管理と人材育成にあると思っています。集中治療や急性期を長く経験し、人に負けないような臨床判断能力も磨いてきました。今こうしてかかりつけで管理者としてチャレンジできているのは、その価値をブランディングしてきたからではないかと思います。
かかりつけに興味がある看護師に一言
私が過ごしてきた時代とは違って、これからの世代の方々は、もっと複雑な時代を生き抜くことになると思います。例えば「病院で働けばボーナスもちゃんともらえて、訪問看護より給料も高くて安泰だから、やっぱり病院のほうがいい」と思う方は多いと思います。
しかし、この先も同じ構造が続くとは限りません。もちろん、訪問看護ステーションが安泰だとも思いません。そう考えると、何かチャレンジしたいと思った時には、迷わずチャレンジしたほうがいいのではないでしょうか。
訪問看護に興味がある、転職に迷っている方がいるなら、ぜひチャレンジしてみてください。
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<お知らせ>
みんなのかかりつけ訪問看護ステーションでは、「日本の隅々まで最高のケアを届ける」というビジョンの実現を一緒に目指す仲間を募集しています。興味あるかたはぜひホームページからご応募ください。見学も受け付けてます!→【採用ホームページ:https://kakaritsuke.co.jp/recruit/ 】
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