聞き書き(其の四)「俺の人生、俺が決める」
訪問看護ステーション有松
2021.03.23
株式会社デザインケア・みんなのかかりつけ訪問看護ステーション、教育研修部です! 私たちの訪問看護ステーションでは、医療的なケアだけでなく、「聞き書き」というケアにも取り組んでいます。今回はシリーズ4回目。訪問スタッフ=「ケアライター」によるEさまとご家族への聞き書きをご紹介します。
『俺の人生、俺が決める』
語り手:利用者Eさま
聞き手:有松店看護師
~仕事のこと ~
仕事? あれだ、俺は建築関係。
…仕事は楽しかったねぇ。
自営でやっとったんだけど、それまでは会社勤めしてた。勤めてた会社が潰れちゃったのをきっかけに自分でやり始めたんだよ。
建築の仕事を自営でもやれるって思って始めてね。お客もついて、上手くいったもんなぁ。
会社勤め時は8時に家を出るとか、規則やら何時に会議やら、どうたらこうたらってあるでしょう?
上司の言う事も色々と聞かないといけないでしょう。だけれども自分でやると自由だからね。
朝の4時に家を出て、仕事やってても楽しかったからね。仕事も取ってこれたし、それだけはいいなって思ってたんだよ。
まぁ、自由人の俺にとって仕事は楽しい時間だったよ。
~別れの挨拶~
俺は4人兄弟の1番上でね。
一番下の弟と妹は遠くに住んでるけど、再来週にこの家に来ることになってる。
そこで俺、最期の別れをしとこうかなって思っとる。・・・今度はいつ会えるか分からし。
数年前に兄弟の一人が癌で亡くなってるんだ。
妹にとっては、兄弟を癌で亡くして、その上「兄さんまで癌で死ぬなんていかんじゃないか」って言っとるけどな。
…まぁ、こればっかりはしょうがない。 俺の頭がしっかりしとるうちにね、別れを言おうと思って。
~家で死にたい~
退院してから思う事?
そうだなぁ、家がいいなって思うね。孫とも遊べるし。
孫は小学生から高校生もおる。学校で部活もしとるけど、ちょくちょく顔を見せに来てくれる。
写真見る?かわいいでしょう?孫は特別にかわいい。
うん、楽しみが多いわ。
それだけでも帰ってきてよかったって思ってる。
俺は昔から規則に縛られるのが嫌いなんだ。病院って所は規則があるからね。それが悪いわけではないけど、俺には合わないね。
先生にもいろいろ心配かけたんだけど、「俺の人生だ。俺が自分で決める。自己責任だって。」って話したよ。
自分の体は自分が一番よく知ってるんだよ。
やっぱり病院より家の方がいいな。
家は好きなご飯が食べれるし、家族がそばにいる。テレビも自由に見れるしね。録りためていた映画だって見れる。夜中にトイレに行くにも気を使うこともない。自分の好きな時に昼寝もできるし、自由があるんだろうかね。
今はいつもと変わらない朝が来たことが嬉しいなと思う。
肩の痛みはあるけど、それでも今日は変わらず来たなって朝に思えるからね。
…家で俺は死にたいんだよな。病院では死にたくない。
~家族への想い~
この前、娘が床屋に連れて行ってくれたんだよ。娘は車で送り迎えしてくれて。
雨が降ってて自分が濡れるのに、娘は俺の方に傘さしてくれてね。肩も支えてくれた。
まぁ一応心配してくれとんだなって思ってね。
時々、妻はこの部屋に来て、そこの椅子に座っていろんなことしゃべるんだよ。
こういうのいいな。
もうすぐ冬休みだろ? 休みになれば、孫も娘もこの家に来やすくなるでしょう。いっぱい会えるでしょう。だから冬休みまでは頑張ろうかなと思う。
冬休みになってクリスマスが来たら、家でみんなで集まってパーティーができるだろう。
それまでは頑張りたいなと思う。
明日の夜、娘も孫もここに来て、焼き肉するみたい。お腹は空かないけど、妻のご飯は味がある。美味しいと思う。少し食べたら満腹になるけど、美味しいんだ。
みんなの美味しいっていう顔を見てるのがいい。
それだけでもいいわな。
だから冬休みがきたら、もっとみんなに会えるだろう。うん。楽しみだ。
そんなところを思うからよろしく頼むね。
~グリーフケアにて、奥さまより~
昼間はいいんだけどさぁ、夜になるとやっぱり寂しいんだわ。
仏壇にいっつも文句言ってやるの。先に死ぬなって。喧嘩やる相手がいないなんて寂しいって。
逝くのが早すぎるっていう人もいるんだけどさぁ、まだ私が動けるうちに逝ってくれて。これがもっと後だったら、私も動けんかったでしょう。ちゃんと考えて逝ったんだろうな。
孫たちにも身をもって人が死ぬってことを勉強させてくれた。普通なら死ぬなんてこと、わからないでしょう。人が死んだらこうなるってこと、だから簡単に殺してはいけないってこと、身をもって教えてくれたんだと思うよ。
一緒になって40年以上。ほんとに歴史は長い。
好きとか嫌い通り越して運命共同体だからね、夫婦ってのは。
…私が看れて良かったと思う。
私の事好いていたんだろうなって思う。あんなに無理言って家帰ってきてさ。
そうまでして家におりたかったんだろうな。
(了)
あとがき
(ケアライター/有松店看護師)
在宅療養を開始するために、病院で退院カンファレンスが開催されました。そこで「家に帰りたい」と繰り返し言葉にされていたEさま。がん末期ということもあり、ご家族さまは本当に自宅療養ができるのか心配されていました。
退院カンファレンスのとき、Eさまは私たちと目を合わされませんでしたが、自宅に帰って来てから「ご自分の人生やご家族さまへの想い」についてぽつりぽつりとお話をしてくださいました。
「俺の人生、俺が決める」
人生に妥協してこなかったEさまが何よりも希望されたもの。Eさまに穏やかさをもたらしたもの。それは、自宅で送るご家族さまとの何気ない日常でした。
【「聞き書き」のバックナンバー】
・聞き書き(其の参)「やりたいことがいっぱいある」
・訪問看護で「聞き書き」に取り組んでる理由
・聞き書き(其の弐)
・訪問看護で「聞き書き」やってます
・『訪問看護と介護』1月号で教育研修部が紹介されました
※掲載については、ご本人またはご家族の承諾を得たうえでご紹介しています
※聞き書きの内容は、個人が特定されないようアレンジしていることがあります
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